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「さう、カワラケ、カワラケ云ひなさんな」
「あんたは鮒をたべなさるかね」
と、加藤巡査は無意識に汗の滲み出た額のあたりを指でこすりながら、心配さうに大小の焚火を見やつた。彼の声はしはがれていた。
「へえ。――わし達は小倉組の者ですが、ちよつと怪我人ができましたよつて、せんせいに御面倒かけに上つたんですが」
「何だらう、山師を煽おだてて又一儲けしようてんだらう」
「よし、それでは預つとかう」
房一はむつつりとしたまゝ答へた。
今泉は調子づいた。
「さうですか。それは――」
鍵屋の隠居神原直造は老来なほ矍鑠と云つた様子だつた。
そこに、房一は、酒のために紅くなつてはいるが、そして、まだ額のあたりに筋張つた色が立つてはいるが、稍やゝ前こゞみになつた半白の頭を見た。それは河原町の人などには見られぬ線の粗あらさとどぎつさこそあつたが、想像したよりもはるかに老人だつた。
だが、変化は盛子にだけあるのではなかつた。房一も、捉みどころのないやうに思はれる一年あまりにもかゝはらず、あの計画だの野心だの猪突ちよとつだのいふものの他に、何か一つの自然さが、生活のつくり上げる自然な段取りといふやうなものがいつの間にか身体にくつついて来たやうであつた。
ふいに、彼は頭を上げた。
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