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男はまだ立つて、あの話を持ちかける構へといつた風を持していた。
徳次は足を踏ん張つて立ち、まだそこら中を見まはしていた。房一はちらりとその顔を見たが、黙つて片づけていた。
「いやネ、誰か赤山のことに精くわしい者はいないかつてんで、わたしの所へ来たのですね。まあ、案内するにはしたが、あの連中と来たら地の底でも見えるやうなことを云ふんで呆れたところですよ」
彼は自信を失つた。それにこの苦痛と動揺は明らさまに説明しにくい、説明したところで判つてもらへない種類のことだつた。房一はそれを盛子の妊娠の揚合にも経験した。
「お松ですか?お松は半之丞の子を生んでから、……」
私はもともとヌル湯好きで、いつまでつかっても汗のでない程度が好きだ。
と、急に練吉が小耳にはさんで云つたのは、多分黙つて他のことを考へていたのだらう。
喜作はふりかへつた。そこへ房一も登りついた。三人は瞬間顔を見合せた。そこに、房一は自分よりは二つ三つ若い、だが禅坊主のやうな頭骨をした精悍な表情の神原喜作を見た。
「ですが、何とも手のつけやうがない」
さう云ひすてて、大きな音を立てて下駄をひきずりながら立去つたのだ。
「ジョン、そら!ウシ!」
房一はふりかへつた。
小谷が対岸から流れを指しながら叫んでいた。房一の竿の前を渡渉とせふするので承諾を求めたのだ。
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