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「何んの。面倒だからこのまゝ行かう」
練吉は小学校時分のことを思ひ出したのかふいにをかしさうに笑ひ声を立てた。
「さうだ」
と、さつき目にもとまらぬ速さで腕にさはつたときと同じく、軽くすつと身をひくやうにしたかと思ふと、もう背を向けてそゝくさと葭子張りの便所に入つて行つた。――
房一はいかにもそれがやり切れない、と云つた風に吐き出すやうに云つた。つゞけて、
「それは勝手だが、あんなもの、温泉と思っちゃいかん」
「なあ、ジョン!」
「うむ」
房一はその玄関土間に足を踏み入れて、
「徳さん、君は草履ばきぢやないか」
そこへは、案内も乞はずに、小谷吾郎が気がるに裏口から入つて来た。
と云ったそうだ。
と、いきなり突きを喰はされた練吉は、神経的にさつと青ざめながら、反問した。
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