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    「ね、大石さん。今夜一つ私のところで慰労宴をやらうといふんですがね。あなたもぜひどうですか。この三人だけでね」

    と、一向にそんなことを知らない房一が云つた。

    「それからね」

    それは直造が案内状を出す間際になつて心づき、入念に考へたあげくに呼ぶことにした高間房一だつた。

    「どうもおれは、身近かな者だと平気で診られないんだね」

    さう云ふと、男は入口に待つていた印袢纏の背の高い男とつれ立つて、高間医院を出て行つた。

    ――「それでは、わしの方からお礼を云はなきあならんのです。どうぞ、よろしく願ひますわ」

    「これですか――?」

    「印度洋の方では、何とかいふ軍艦がたつた一隻で荒あばれまはつているんだつてね。それがちつとも捉つかまらないと云ふから面白いねえ」

    「どうしたい、君はその恰好をまだ見せたい気かい」

    男はじろじろと房一を見ていた。

    「この人はちっと眠むがってるでな……」

    その時、ふいに或る戸口から一人のひよろ長い男が、一度敷居につまづいてそのはずみで飛び出した工合に、明い路上に出て来た。帯がほどけてる、と見えたが、さうではなかつた。あんまり着物の前がはだかつて、したがつて腰から後裾にかけて長く引きずつたやうになつていたせいだらう。

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