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小谷は疳高い声で云つた。
さう呟くと、小谷は追鮎の力を試すやうに竿を高く上げてみた。彼のきいきい云ふ金属性の声は、こんなひとり言のときでも絶えず房一に向つて話しかけたがつているやうであつた。
御大典とそれにつゞく奉祝日は瞬またゝくまに過ぎ去つた。
「これを御大典のお祝ひ日に着るんですつて」
「あゝ、さうだつた。なあんだ!」
大した川でもないのにこんな風に所々でいろんな名があるのは、もとより必要があつて生じたのであらうが、一面に於てはそれぞれの水域に住む人達の生活がどんなに川と密接に結びついているものかを語り、同時に、吾々が自分の子供に思ひ思ひの愛称をつけるやうに、それぞれの呼び方の中に彼等の川に対する愛情を示していると考へられる。で若し誰か川好きな男、たとへば徳次などに向つてこの川をつまらぬとでも云はうものなら大変である。
徳次は急に目くばせをした。
「ほゝう!」
庄谷はあの冷笑するやうな白眼で、物好に訊きたがる人に答へた。
「え」
「その姿は見えないのですが……。」
「何だらう、山師を煽おだてて又一儲けしようてんだらう」
盛子は時々半ば無意識に呟いた。
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