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が、材木置場の混乱にもかゝはらず、そこから一段と小高くなつている出張所の構内では、やはり高張提灯がかゝげられ、焚火が燃え、人が立つて歩いていたが、をかしい位にひつそりし、柵のところにかたまつた人影は下方の混乱を黙つて見物しているとしか見えなかつた。
練吉と房一は、川沿ひの路を、肩を並べて自転車を走らせていた。
熱心になっていた「な」の字さんは多少失望したらしい顔をした。
「ほゝう!」
彼女はその表情を少しもくづさずにすつと引き下つたが、間もなく帰ると、
房一は刃物で突く恰好をしてみせた。
「ですが、何とも手のつけやうがない」
練吉は今更のやうに、あらためて房一の様子を、その新調の自転車や医者らしい鞄などに目をやつた。すると、それらは今新しく練吉の前に彼の持物と同じものを感じさせ、更に、今まで耳にしていたものの、つひぞ気にもとめずにいた医師高間房一といふ人物がそこに忽然と姿を現しているのをいやでも見なければならぬと感じさせた。それは何故かどこかで練吉の自負心を傷つけ気を苛立たせるものだつた。
「どういふことです、わたしにはさつぱり――」
と、小谷は人差指と中指を二本突き出して見せて、
瞬間、房一は緊張した。道平が急変したのかと思つた。さうではないらしい。急患だらうか。それだと、こんな風ではなく、もつと低くおろおろした風に云ふ筈だ。彼は手をやめて、耳をすませた。
きよろりとした眼でしきりと家の中をのぞきこみながら、しばらくして
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