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「はあ!さう――ですね」
「それあ、いかん。こんなに多くはいらんよ」
「御焼香を。――どうぞ、お近いところから御順に」
小谷は房一に話しかけた。
「うん、寄りがあるからな、あんたはうちに帰つとんなさい」
「ウシ!ウシ!」
と、小谷が徳次の足に目をつけて云つた。どこで手に入れたのか、徳次は白い紙緒の藁草履をちやんとはいていた。
徳次は一種くさめをする前のやうな、煙けむたげな表情になりながらわき見をしたり、房一を眺めたり、どぎまぎして答へた。
「ほう。元気だね。ハッパでやられたかね」
聞えないといふしるしに、房一は手を振つて見せた。それが盛子にも解りにくいらしく、しばらくためらひ気味に立つていたが、やがて河原へ下る段を降りはじめた。
「どういたしまして。お茶位さし上げんと」
「大きいとも、こんなのを見たのは久し振りだ」
彼は、医師検定試験といふものが実際は医専を出ることなんかよりはるかにむつかしいものだと知つてはいたが、しかし、正規な教室で得るところのものは難易にかゝはらない何か別の正統さといつたやうなもの、より科学的な、――つまり、医者らしさだといふことを、心のどこかで信じていた。それが、房一には欠けている、といふ風に思はれた。
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