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    房一は大きくうなづいて見せた。もう獲物は大分前からとまつていた。

    「あの訴訟はどうなつたのかね」

    「え、御老人、どうしました?苦しいですか」

    道平が口をうごかせるまでには随分手まどつた。

    と、房一は小谷に向つて訊いた。

    ――だが、作者がこんな説明をしている間ぢう、房一はそこで愚図々々と立つていたわけではなかつた。何かしらあての外れたやうな気がすると同時に、房一は漠然と庄谷の気持を見抜いた。彼はそんなことで悄気しよげるやうな性質でもなかつたので、ほんの路傍の挨拶だけで別れると、さつさと上手に歩いて行つた。

    房一が道平を送つて行くことになつた。

    「いや、これから往診に行くところだ」

    「やつぱり徳さんが多いね」

    と訊くと、遊び友達と河へ行つたといふ返事であつた。

    今度はかるく甘えた、羽毛でくすぐるやうな調子があつた。房一はざぶりと水を顔にぶつかけただけで立上つた。

    「すみましたよ。さあ。何でもありませんなあ。ぢき起きられますよ。ごく軽いんですからね」

    「もう一人後から来るかもしれませんが、そしたらよろしく頼んます」

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