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「誰かと思つたよ」
練吉の額は今青いと云ふより磁器のやうな冴えた白さに変つていた。目瞬きはぴつたりととまり、線を引いたやうな切れ目が深く長く、宛あたかも部厚い眼鏡そのものに入つたヒビ割れのやうに見えた。そして、
と訊くと、遊び友達と河へ行つたといふ返事であつた。
房一は永い間診察した。ひどい貧血症、食慾のないこと、動悸が打つ、野良仕事はもう三四ヶ月前からできないでいる、――
ふたたび相手の鞄にちらりと目をやりながら、練吉は半ば信じない風に訊いた。
と、父親の顎のあたりに又目をつけた。
「それからね」
「ですが、何とも手のつけやうがない」
房一は話を変へた。
「あなたは御存知ないんですかね」
「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。
と、おづおづ答へた。
貰った方でもそのままには済まされないから、返礼のしるしとして自分が携帯の菓子類を贈る。携帯品のない場合には、その土地の羊羹ようかんか煎餅せんべいのたぐいを買って贈る。それが初対面の時ばかりでなく、日を経ていよいよ懇意になるにしたがって、時々に鮓すしや果物などの遣やり取りをすることもある。
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