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と、加藤巡査はくり返した。
「何かね、わしがどうしたといふんかね」
若しさうだつたら、そのまゝおとなしく坐つてはいられまい。それは、皆の前で公然と頭を押へられた所を自認するやうなものだ。前例にもなるだらう。一度きまつたとなつたら又打破るのは容易ではあるまい。それは、河原町で今後医者として立つて行けないことを意味する。頭を押へられたきり、ついには逃げ出すより他はないといふ破目に陥るだらう。彼は思つた。
徳次は水際につないである船の所に行き着く前にもう褌ふんどしとシャツ一枚の半裸体になつていた。衣類をくるくると円めて、帯でひつ括くゝるなり、ぽんと手前にはふり出して、いきなりざぶざぶと河の中に入つて行つた。船体を蔽つてあつた帆布をめくりとる、敷板を上げる、ロープを片づける、その後は船体の水洗ひだ。
「ホリョ?」
入浴は快適だったが、あがる時が苦痛であった。越して来たのが冬だから、湯から上ると、ガタガタふるえる。とりわけ寒い日は、全身をふく余裕がなく、夢中で着物をひッかぶっていたりした。
庄谷はあの冷笑するやうな白眼で、物好に訊きたがる人に答へた。
「あいつももう仕かたがないのですよ。『青ペン』通いばかりしているのですから。」
「あゝ、お医者?」
「どこの訴訟だ。なに鍵屋、うん、相沢か」
「さあ、くはしいことは判りませんね」
「おつ」
「あんたは鮒をたべなさるかね」
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