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「ほう、クレーといふのはカワラケのことかね」
と云ふ疳高かんだかい大きな声があたりに響きわたつて房一を面喰せた。
「うむ」
「君は昨日その九州から来た連中を赤山へ案内して行つたちふぢやないか」
と、その稍落ちつきのない女らしい黒瞳くろめがちな眼を道平に向けた。
「何でもいゝから早くしてくれ。路をまちがへて大廻りしちやつたんだ」
「坊は?」
さう呟くと、小谷は追鮎の力を試すやうに竿を高く上げてみた。彼のきいきい云ふ金属性の声は、こんなひとり言のときでも絶えず房一に向つて話しかけたがつているやうであつた。
「なに、切れてるつて?」
「それで、――どうかね?」
犬が何を見つけたのか、その時さつと身を躍らして傍の草地にとびこんだ。二三度そこらをぐるぐると廻ると、鼻の先に真新しい土をくつつけてまた房一の傍にもどつて来た。
「あの人は来まいて」
「あの山に田地を注ぎこんで裸になつたのは三人、わしも知つとる」
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