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    このポインタアの雑種は、房一の往診にはどこへでもついて来た。いゝ路づれだつた。

    「さうぢや」

    「あいつももう仕かたがないのですよ。『青ペン』通いばかりしているのですから。」

    これは怪談どころか、一種の美談であるが、その事情をなんにも知らないで、暗い風呂場で突然こんな人物に出逢っては、さすがの柳沢権太夫もぎょっとしたに相違ない。元来、温泉は病人の入浴するところで、そのなかには右のごとき畸形や異形の人もまじっていたであろうから、それを誤り伝えて種々の怪談を生み出した例も少くないであろう。

    かういふことになると、彼の話振りには一種の無邪気さが現れて釆る。

    さう声をかけながら、練吉は近眼鏡の下から切れ目をぱちぱちさせ、気安げに、眠つている道平の顔の上にのぞいた。

    「まあ、とにかく、御迷惑かもしれないが、一度御足労を願ひたいと思つてね」

    「おい、やつは所長だぜ。まだ新任で、来たばかりなんだ。――行かう!」

    今日見るその顔は、色こそ黒かつたが、地蔵眉の、眼もそれに釣り合つて細い糸を引いたやうにやさしかつた。だが、その声には何かきつぱりした、率直さが感じられた。

    「まあ、のみなさい」

    「いや、挨拶まはりですよ。どうぞよろしく」

    「ほらね、かういふ形のと、又別にかういふのがあるだらう」

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