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    「その首はどんな顔をしていた」と、友達のひとりが訊いた。

    「いためた?」

    「なに?」

    「いや、いや」

    「痛むか?」

    さう云ひすてて、大きな音を立てて下駄をひきずりながら立去つたのだ。

    「途中から帰つて来たんだよ」

    房一がそこへ出るのと、さつきの二人が表から入つて来るのと同時だつた。

    「すまんでしたな、長話をして」

    盛子は笑ふまいとしながら、こらへかねて真紅になり、そこにうつ伏しになつてしまつた。道平も釣りこまれて笑つた。だが、それは心持ひきつゝた痕跡の中に押しこまれたみたいになつた。彼が髯を落したのはそんなに悪戯気でやつたのではなかつたので、盛子の大げさな可笑しがりやうがいくらか気にさはつたのだ。で、彼の顔はすぐに老人らしい克明な生真面目さをとりもどし、房一の方を向いて、ゆつくり切り出した。

    はじめて往診に行つたときの相沢の濁だみ声が耳に蘇よみがへつて来た。それから、あの粗末な黒い上着と、カーキ色の目立つ乗馬ズボンと、又あの鼠を思はせるやうな黒味の拡がつた、ちつとも目瞬またゝきをしないふしぎな眼玉とが、房一のつむつた瞼の中に現れて来た。

    「ふん。何でもありやせんよ。大方、腹でも痛かつたんだらう」

    練吉は盃を口にふくみながら答へた。

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