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    「私も眠れなくて夜中に一度湯へはいるのですが、なんだか気味が悪るござんしてね。隣の湯へ溪から何かがはいって来るような気がして――」

    「いや、もう御免蒙つて脱いで行かう」

    「ふむ、もうよろしい、よろしい」

    「それが、その、来ないわけがあるのさ」

    今泉にはやつと徳次の考へていることが判つたので、熱心に説明した。

    それから十二年の後である。明治元年の七月、越後の長岡城が西軍のために攻め落された時、根津も江戸を脱走して城方に加わっていた。落城の前日、彼は一緒に脱走して来た友達に語った。

    「よし。――さうしとかう」

    「あなたは御存知ないんですかね」

    「随分早いのね」

    「おい、今高間君が来ていたんだよ」

    と、房一は帽子を手にやつた。

    「どうして又今まで黙つていたのかね」

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