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「坊は?」
「それで――?あゝ」
と云つたまゝ、盛子は房一の顔を見てくすりとした。そして、ばさばさ音をたてて大きくひろげてみせた。それは神官の着るやうな袍はうだの指貫さしぬきに模したものだつた。おまけに、ボール紙で造つた黒い冠、笏しやくの形をした板切れ、同じく木製の珍妙な沓くつだのいふ品々が揃つていた。
「あら!いらつしやいませ。ようこそ。――ほんとうに、よくまあ!」
「こゝの消防演習をやつたのだ。そんなに騒ぐことはない」
相手はしばらく黙つていた。だが、場所が高いのと、柵の中にいるためか、落ちついて答へた。
真黒い顔の男が傍によつて訊いた。
河原町の上手を出外れると、やはり一帯は桑畑の中を、路はだんだん上り勾配をましながら川から遠ざかつて行くのだが、左手に迫つている山腹の下方にとりつくと、そこから急に路面も赤土になつて、途中でいくつも屈折した坂路が山を越えて杉倉の方につゞくのである。
「ね、大石さん。今夜一つ私のところで慰労宴をやらうといふんですがね。あなたもぜひどうですか。この三人だけでね」
「やっぱり半之丞の子だったですな。瓜うり二つと言っても好よかったですから。」
房一はそれに目をとめていたが、急に強い口調で、
「かりに、おれが真正面から反抗的に出て、それがために住みにくくなつたとしても、同じことだ」
六
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